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2012/05/08

川端裕人 「銀河のワールドカップ」

「失業中のJリーガーが子供たちと出会い、チームを作って勝てるようになる」、とこの大枠だけを聞くとよくあるパターンの話になっても不思議じゃない。予定調和な話で終わってしまいそう。

この小説が面白いのは、それぞれの子供の成長していく姿が丁寧に描かれているからだろう。音だけで行う視覚障碍者のサッカーゲームやサッカーのゲーム(8人制のゲーム)の動きが細かく描写されるときにもそれぞれの子供がどう感じているのかがポイントになっている。サッカーをよく知らない自分にも面白く読めた。

子供たちはそれぞれに成長する。自分の努力だけで成長するのではなく、コーチとの相互作用がゴールデンエイジの学習の速さに作用し、チームの中で自分の居場所を見つけていく。そして、それぞれがチームというコミュニティを卒業する。

ストーリーの最後のゲームを読んでいると、登場人物に対して「大きくなったなあ」と知り合いの子供の成長をうれしく思うのと同じような気持ちでじーんとなる。サッカーを知らなくても楽しめるし、サッカーを知っているともっと楽しめるはず。



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