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2014/10/18

濱口桂一郎 「若者と労働」入社の仕組みから解きほぐす

日本の年功序列賃金よりも欧米(でそうであるといわれている)仕事に対して賃金が決まるほうがいいのではないかと漠然と考えていた。

 この本を読むと、
仕事をする能力はない新卒を一括採用するという採用のやり方
と、
会社で人を教育して使える「社員」にするという考え方、新卒採用が毎年あるのでそれにしたがって定期異動もある、などなど全部はつながった話なのだなと(当たり前だが)理解できた。

 欧米型の(というか日本以外はたいていそうであるらしい)採用では、仕事に対して適した人を採用するから実績のない人は採用されにくく、若者の雇用問題というのは必然的に存在する。OECDの調査で「勝ち組」に分類される人の条件が
卒業5年以上の期間、その期間の大部分(70%以上)において雇用に就いており、学校を離れてから初職を見つけるのにかかった期間が六ヶ月未満の若者
というのを実際に読むと「それはちょっと」と思う。

これは今の日本の状況ですらうまく行っていないほうに分類されるだろう。

最近さまざまな企業の人事制度変更の理由づけとして、グローバル化のために年功序列廃止とか若手登用とか言われる。いかにもそれっぽい話として理解してしまうのだが、今の「新卒一括採用」を続けつつ微修正しても「ジョブ」型にはならない。

教育、行政、福祉、企業についての法律など全部を組み替えないと「ジョブ」型採用の社会にはならないように思う。制度だけではなく、一般人が「若い人は就職できなくて当たり前」という社会を受け入れないと、なんだか雰囲気の悪い世の中ができそう。今でも「学校出てふらふらしてる」と言われて非難されるのが普通だろう。

濱口氏は、ロスジェネ世代(40代になりつつある)の救済策、兼、「ジョブ」型への移行を想定したものとして、「ジョブ型正社員」(職務、勤務場所や勤務時間を限定する無期雇用)を提案している。これは、契約社員が何度も反復されて便利に使われてしまっていることや、「正社員」が無限定に責任を負わされることに対するほかの選択肢を与える、という意味でもある。

結局、ブラック企業の問題というのも今の雇用の形態から派生したもので、会社のメンバーになる代わりに無限に責任を負ってがんばりますよ、という昔の正社員のあり方から、「会社のメンバーとは言っても育てもしないし面倒みるわけがないだろ」となったら、無限の責任だけが残ってブラックになった、という。。。

「ジョブ」型社会で気になることとして、大学に必要とされる教育内容がある。職業に密接に結びついた教育ができる形にしないといけない。今の職員にそれが可能なんだろうか。そういえば、小幡績が、これからの雇用には大学ではなく、高専の強化だ、という趣旨のことを書いていた。

 これらの話の前提として経済運営がまともであって、それなりの仕事がある社会であることが必要である。若者の雇用とか女性の活用なんていう話は経済が抜けていると画餅となる。それを考えると、政治がものすごくうまくやらないと「ジョブ」型への転換はうまくいきそうにない。